さむくなったから。

しみるなあ、しみる。
最近しみます。
いろいろなものが、しみます。

無題。

http://www.youtube.com/watch?v=zTbjLOem2Qg&feature=related

ベーゴマ。















おかべくんと遊びました。
彼とは幼稚園からお友達ですが、
時間通り集まれたことは一度もありません。
僕が遅刻して、その連絡をうけ、
結局彼もさらに遅刻するのです。
今回もまたそうでした。
中学の頃とちがうのは、彼が結婚しているという点と、
片手にウイスキーを持っているという点だけです。
いやちょっとまって、ウイスキーうそつけ!
彼はお酒なんて決して強くないはずなのに、
自分はロックンローラーだからと、頬をもも色に染めて現れました。
でも前回はGAPの前に上半身裸で現れたので、それに比べれば全然ましです。

今日は何をするかねと、特に何も決めていなかったのですが、
彼は珍しくカメラを持ってきていたので写真を撮ろうという案がでます。
大きな、いいカメラです。
彼は足の写真を撮ると言い、歩いている人の足を撮りました。
それは盗撮だからダメだよ捕まるからダメだよと教えてあげると、
彼は言います。
「明日仕事を休みたいんだ、だから今日捕まって、明日仕事休む。
だって今日の僕はほら、ロックだろ?」とまたウイスキーを飲んだので、
僕はいやそんなの全然ロックじゃないただの酒好きの変態だよと教えてあげると、
彼はウイスキーをカバンにしまいました。

結局、ドーナツ屋に入り、話をします。
ミスタードーナツじゃないあのおいしいドーナツ屋です。
話題は、今までにした失敗経験の話。
彼の失敗はネットゲームにハマった事でした。
たしかに数年前10代後半でネットゲームにハマっていました。
それにお金をたくさん使ってしまったそうです。
武器を交換したり、レベルを上げる為にお金が必要だったそうです。
おそらく60万円くらいは使ったと、
睡眠時間3時間ほどで毎晩必死にパソコンと向き合い、
汗水をたらしていたと彼は目を細めます。
全然しぶくなかったです。
でもどんな失敗からでも学ぶ事はあります。
僕も受験に失敗した事や、悪い事をした時、
ああこれがだめだったなと気付いたりしました。
おかべくんに聞きます。
「その失敗で、何か学んだことはあった?」
彼は10秒くらいためて目を細めて言いました。
「最強」
ネットゲームの中ではかなり強かったらしく、
人の上に立つことの難しさや、
プレッシャーを学んだそうです。
彼はまた目を細めて、足を組みましたが、
全然しぶくなかったです。

ドーナツ屋を出て、電車に乗ってどこかの駅に行こうと決まります。
彼が僕に聞きます。
「好きな色は?」
緑と答えると、じゃあ緑の路線に乗ろう。と。
今度は僕が彼に聞きます。
「好きな数字は?」
3と答えたので、3番目の駅で降りよう。と。

わくわくした気持ちでちょっとした田舎の古い駅を想像します。
ぶらり旅のような、いい出会いを期待します。
ところが緑の3番目の駅は新横浜駅でした。
都会!少しがっかりしましたが、決まり事なので降りました。

でも新横浜にはラーメン博物館があります。
そこに行きます。そこは地下街でした。
階段を降りるとびっくり、昭和な街がありました。
あとで写真を載せるので見てください。
あ、正解。ここだ、ここに来たかったような気がする、
そこには剣玉や、ベーゴマ、紙芝居、射的、アイスキャンデーなど。
昭和な街が見事に切り取られています。
剣玉などで遊び、紙芝居を少し見て、街をぐるっとしました。
おかべくんは言います。
「あーなつかしいわあ」
いやなつかしいのは違うよ、これは僕らよりももっと昔の感じだよ、
僕らの子供の頃は剣玉じゃなくてもうスーファミだよと思いましたが、
彼はまた目を細めていたのでそれはもう言いませんでした。

昭和の街を出るとまた平成の街が平静を装っています。
(↑この行はあとで消すかもしれません)

雨も降っていたので屋根のある所にいこうと、また電車に乗ります。
桜木町に降りると、APECの何かで高校生がわんさかいました。
僕たちは女子高生の足だけを見ながら、しばらく歩きます。
ほんの少しちょっとだけ触らせてくれたらそれだけでいいのに、や、
夜景の綺麗なBARで、上品にバイオリンを奏でるように触りたい。など、
いろいろなことを想像しながら歩きました。
はっと我に返り、自分たちの顔を見ると驚くほど大人で、
鼻の下も伸びきっていたので、
こりゃあいけん、と思い ちゃんとしました。

カフェでまったりして、ゲームセンターでマリオカートをして、
結局、もう時間が結構遅くなったのでそろそろかなという事になり、
夜の海の近くの道を歩いて駅に向かいます。
このへんはとてもデートっぽかったのでよかったです。
今日は楽しかった、こんな風に遊んだのはひさしぶりだと、
よく歩いた足を褒めながら、雨の中を吸い込みます。

そごうの地下を通った時に、
そうだ、あやみさんに何かお土産を渡してよ。
と、僕は彼のお嫁さんに何か買うことにしました。
こういう時はちょっとお洒落な感じのものがいいと、一生懸命探します。
でもなかなかお洒落そうに見えるものがありません。
パッケージデザインってすごく大切だなと感じました。
僕だったらもっとこう、と偉そうに言ったりもしました。
結局、四角い箱で可愛い栗きんとんみたいなやつに決めました。
おかべくんに渡すと「今日ふたりでお茶するわ」とうれしそうに言います。

意外とその言葉がしっくりきました。
それは本当に意外な程です。
この種類の言葉はあまり似合わないと思っていたのですが、
とても自然でした。

別れ際、じゃあまた。と、片手をあげ彼は行きます。

どこに行くのかは知っています。
僕もなんとなくですが知っています。
おかべくんはそこに行きました。
僕はSIONを聞きながら都会の眠気と戦い、
ページをめくるかどうか、ずっと考えています。


さておきおかべくん。
あたらめて、結婚おめでとう。

中学の頃とちがうのは、彼が結婚しているという点と、
片手にウイスキーを持っているという点だけでした。
いやちょっとまって、ウイスキーうそつけ!

おわり

ボーイズ。






てるてる。


か   |

°   |   |
       
    |       /
 |        れ  |
    |  く |
  |   で
 |  ん |
| や
 雨     。

デコメール。

デコメールやってみたいなあ。
あれどうやってやるんかな。
すごく可愛いと思うのに。

さむくさむく。

寒くなってきたので
冬が近いです。

僕は冬好きです。
寒い時は手をつなげばいい。

木曜日デート。

木曜日に岡部くんと、
久しぶりにデートします。
是非、晴れて欲しいです。

写真は6年前、19歳の頃の岡部くん。

大きなワゴン。

月から金は仕事、土日は紙芝居をしながら暮らそうかと今少し思っています。

sneeuwの展示。

今日は仕事が少し早く終われたので、せいこねえやんの服の展示会を見に。
ギャラリーに入ると、いい感じの白い壁とハンガーラックに吊るされた服。
そしてお客さんに説明をするせいこねえやん。
やっぱり今日も髪型がかっこいい。
差し入れに饅頭を渡すとペコリとするねえやん。
一瞬せいこちゃんに見えたけどまばたきの後はやっぱりねえやんだった。

吊るされた服は言うまでもなく素敵だった。
なんというかこう、凛としているというのかなあ。
洗練っていうのかなあ。
よし色の感じで言ってみよう。

サイクリングの緑、春先の風の感じ。
あととても細くて強いグレーはツヤ消し、
反射する高速道路は昼間の写真、
それに青みがかった優しさと、
トレージングペーパーと鉛筆の音の感じに、
黒板消しをポフンと鳴らす、
黒は髪の毛で日本人らしく、赤というか朱色というかサーモンというか一瞬。
また4月には雪が降って、白。
夕暮れ空には積もったかな白。

よし書けた。
こんな感じに見えた。
今回は前よりも少し色が増えた気がする。
でもちゃんとひとつに見えたので、やっぱりねえやんはすごいと思った。
パターンも大胆な所とすごく細かくて計算されている所、すごいバランス。
これを全部一人でやっているなんて、はああ。
ねえやん、まじリスペクトっす。


あんまり書くとなんか生意気なのでこのへんで。
10月23日土曜日までなので、あと2日しかないけれど、
是非行ってみてください。
髪型がかっこよくて、スっとシンプルに笑っているのがせいこねえやんです。
http://sneeuw.jp/11ss/11ssdmbig.jpg
http://sneeuw.jp/

帰り道、一緒に見に行っていた後輩と炒飯を食べながら、
いいもん見たなあとペコリと頷いた。

あ、あのときの。

さっき歩いていたら、曲がり角から女の子がすごい勢いで歩いてきてぶつかりました。典型的なドラマチック。思春期ごろからずっと待ち望んでいたことが今日起こりました。
今はまだドキドキしています。
なので週末は図書館に行きます。
それか、土手に犬の散歩に行きます。
レンタルビデオ屋にも寄ります。

は、は、。

はぁっくしょぉん! 。 
   ・ 。 ゜
。  。     。  。
     ・

     。  
        ゜

今日のねずみ。

僕には、ねずみの子分がいます。
ねずみと話をしていると、
自分はとても小さい人間だなと感じます。
そしてねずみの事を、大きなねずみだなと感じます。


◆ある日、月曜日に仕事が忙しかった時の話。


「あーまた月曜日かあ、今日からまた仕事、
明日も仕事、明後日も仕事」

ねずみ
「しあさってもしごと、ごあさってもしごと、ろくあさっては休み」


◆ある日、居酒屋でおかめとひょっとこのお面を見た時。


「この二人の関係って何かな、恋人とかかな、
何か物語とかあるんかなあ」

ねずみ
「のみともかな」


◆ある日、大阪HEPで大きなクジラを見た時。


「海で本当にこんな大きいクジラ見たら、
絶対写メール撮るよなあ」

ねずみ
「いやもうパソコン買ってブログはじめる」


◆ある日、2日間まるまるレンタカー借りて1日しか使わなかった時の話。


「えーこの車、お金も払ってしまったし、
もったいないからどっか行くしかないなあ」

ねずみ
「それか駐車場に停めて1日有休をとらせてあげるか」

おでん。

しまった。またお洒落ぶってしまった。
調子にのってしまったなあ。

おでん。

それで上手になったらおでんパーティーをしよう。
たくさん人を呼んで、外でやるのもいいなあ。

おでん。

おでんを上手に作れたら楽しいだろうなあ。
冬にかけて練習してみようか。

プチデューク。

突然3連休 vol.P(写真)


























パーキングエリア。

突然3連休 vol.6(最終回)

新見にさば寿司を買いに両親と。今度は父の運転する車だ。
パッソと違ってこっちはわりとふかふかで助手席の感じもいい。

高速道路に乗って、びゆんびゆん飛ばす。
父は運転は上手な方だとは思うけれど、よく飛ばす。
高速道路などではだいたいの車を右から追い越して進む。
でももうそろそろ歳も歳なのでなるべく左を通るようにして欲しい。
え、今書きながら気が付いたのだけれど、
寿司を買いに行くだけで高速道路を使っていたのかそういえば。
んんんー。やるなあ。

車の中ではまた弟の進路の話。
あいつはこうこうであーだからおめーはこうであーだからあいつはあーでこうこうだから。
ここで話をしても意味がないのに。
こうしている今も、弟が東京でバイトもせず鼻くそをほじっているかぎり、何も変わらない。
もしこの文を何かの機会で弟が読むことがあれば、
今すぐその指を鼻から抜き、明日の方角へと向けて欲しい。
その前に、一旦ティッシュ等で拭くことも忘れないで欲しい。
ほんま頼むで、弟。
簡単、おめーが楽しいことをすればええんよ。
楽しそうにすればそれでええ。
親もそう思っとる、うちの親はそういう親じゃよ。
(じゃよってなんなん、じいさんか)

あ、ついたついた、ここが新見。
父が飛ばしたので、あっというまに新見についた。
初めてきたけれど、いい所だと思った。
川と山とのバランスがいい。
目的の寿司屋さんに入って、目的のさば寿司を買った。
備中お祭り寿司といって、このスタイルがすごい。
写真撮ればよかったけれど、ないので今度検索してみて欲しい。

よし達成。とスムーズに目的を達成し、
ゆらーと新見の街を少し走り、また高速道路で帰った。
帰りの高速道路では僕はうとうととしてしまい、ぽとと助手席で寝た。
これが今回の突然3連休の中で、ふいに一番いい思い出かもしれない。
僕は普段、助手席で寝ないから。
東京や大阪の都会ではいつも自分は運転する役だし、
助手席に乗るということも滅多にない。
父が運転し、母が後ろに乗り、二人のありふれた会話を聞きながら助手席で寝る。
きっと高校以来かな。
とても久しぶりのことで、起きた後ちょっと恥ずかしくなったけれど、
たぶん僕はすやすやととても安らかな顔をしていたんじゃないかと思う自分で。
きもちわり!トイレいこトイレ。
吉備のパーキングエリアでトイレ休憩をしてからはもう寝なかった。

家についてさば寿司を食べ、
誰かのお葬式から帰ってきた祖父と祖母に塩をかけ、
ひけなくなったギターをボロンと鳴らし、
テレビ電話で鼠家族と中継し、
自分の幼い頃の可愛い写真にキスをして、
右鼻からは山の匂い、
左鼻からは線路の匂いを嗅ぎながら、
そうかこれが実家の匂いだと思い出し、
そうか明日はもう東京かと思い出した。

自分に確認する。3日前と何が違うのか。何も違わないさ。と僕は言う。じゃあなんで帰ったんだと聞いてみる。それに理由が必要かと答えよう。なるほどそうかと相槌をうつ。でもがんばれる気がする今は、と上を見たら、ああそれはたしかに。と共感して。帰るべき場所?骨を埋める?と硬くなると、いやそういうこと言ってんじゃないとハジかれて、何が言いたいの結局のところと突きつけられて、
えっとつまりそれはね、と間があいた。
つまり?

よく休んだヨって話。
助手席で寝たヨって話。

それだけの話。
それだけで満タンの僕の心なのです。

たくさんおならが出るのは、きっとそのせい。
僕は実家に手を振りながら、誰にも気づかれないようにそっとまた、おならをした。

おわり

オムライス。

突然3連休 vol.5

夕焼けから夜にかけて。
なるべく目の前に見える全部を見ながら、家を目指してアクセルを踏んだ。

この時間、ふと思い出す子供の頃の話、たしか幼稚園の頃かな。
家の近所で一人で遊んでいる時のことだ。
僕はつまずいて思い切りこけた。
ひざをすりむいて痛かったし、
泣き虫で少し太っていた僕は、ひとまず泣いた。
仰向けになってわんわんにゃにゃんと。
その時かな。
僕はたぶん初めて物心付きで空を見たんじゃないかと思う。

夕焼け空に雲が浮いていた。
風も吹いていて、雲がよく動いていた。
そして僕はその雲を見て、間違える。
(おとうさんがゆうとったな、ちきゅうはまわっとるんじゃ)
そう、動いているのは自分側、
地球(地面)の方だと思った。そう見えた。
雲が動くなんて知らなかったからそう見えた。
ははん風の力でちきゅうは回っているんだなと。

小学生になって、雲が動いていること、地球はもういっこ外側でいつも同じ速度でゆっくり回って見えること、
を知るまで結構な間 間違えていた。
今日は風が強いから地球も早く回っちゃうなあなんて、
少年ボサールは思うのであります。

そんな思い出話を織り交ぜつつ、パッソはもう結構家の近くまで帰ってきた。
途中でまたスーパーに寄って母と祖母が晩御飯の食材を。
僕も一旦降りて、スーパーに入った。
祖母はカゴのコロコロをすごい勢いで押すので、
子供やお年寄りを何度も轢きそうになっていた。
後ろを歩く僕は何度も見てみぬふりをした。
目を丸くしていた子供へ、ごめんな。

会計を終え、スーパーを出てふと空を見ると、チラと星が見えた。
夕焼けから夜にかけて。
その帯は、空を見ることが多い。
もしかしたらまた何か発見できるかもしれないから。

あれおかしいな。
こんなこと書こうとしていたわけじゃないんだった。
そうだ次回最終回にしたいので、早送りしよう。
このあと家についてご飯を食べて、
ご飯おいしくてお風呂に入って、父と少し喋って、
歯汚男りゅうくんに「今からラーメンでもいかん?」とメールして、
「ごめん、今友達とオムライス食べに来た!」と返ってきて、
「女子か!」と返してその日は寝た。

次の日は父と母と三人で新見のおいしいさば寿司を買いに。
最終回はその話から始めよう。

つづく

ヘルメット。

突然3連休 vol.4

ごめんなさい。
おならなど汚い言葉を使いすぎました。
バランスを考え、きれいな言葉を置いておきます。
虹、恋、空、夢、緑、素直、透明、雪、
未来(と書いてキボウ)流星(と書いてナミダ)
よしこれで大丈夫です。どうぞ。
--------
30分の海の旅も終わり、島についた。
平日だからかな、
祭といった感じは全くなく、のどかな、本当にのどかな島だった。
ところどころに、芸術品が置いてあるけれど、
それはそれで素敵だとは思うけれど、
こののどかな島だけでも充分な気もする。
東京ではあまり見かけない草や虫。
見当たらない信号。鍵のかかっていない自転車。と、大きなヘルメット。
決してお洒落とは呼べない服を着せられた子供。
石で作られたガタガタの階段に、神社。
お茶どうぞといった貼り紙や休憩の為の椅子。
たばこ屋のおじさんのキビっとしたフレンドリー感。

なるほど僕は3分後にはこの島を好きになっていた。

それに風がおいしい。
本当においしい。おかわり!
僕はこの日たくさんの風を食べた。
空も食べた。海も食べた。おかわり!
山も食べたし、畑も食べた。
いい島だった。おかわり!

いい島だった。

写真を撮ったので、この連休シリーズの最後に載せようと思う。
心のシャッターで撮ったから僕の気持ちが写っているはずだから。

穏やかな時間を島ですごして、僕たちはまたフェリーを目指した。
ついさっきまで青だと思っていたのに、あたりはもう夕焼け色に変わってきている。
山や海は尚の事、
パッソに乗った僕たちもまた、夕焼け色に染められた。
きれいすぎる景色に僕はなるべくニヒルに笑い、
なるべくニヒルにそっとおならをした。

今日は風をたくさん食べたから。

つづく

フェリー。

突然3連休 vol.3

車の中で四人でいろいろな話をしながらバイパスに乗って秋の青空。
途中で少しおなかが空いたということで、
BIGという名前の大きなスーパーで巻き寿司などを買って食べた。
またしばらく進むと、あまり知らない道に入る。
いよいよナビの出番だ。と思ってナビをいじっていると、
「貯水湖があるじゃろお!左に!ほんで右に肉屋があるわ!」
祖母が大きな声で言った。
余談で前にも言ったけれど、岡山では桃太郎の話が有名で、
祖母の顔は桃太郎の話にでてくる鬼に似ている。
「貯水湖があるじゃろお!左に!」
「もうちょっとしたら大きい橋があるわ!」
「トンネル!トンネルがあるじゃろお!」
とにかく声が大きいからだんだん怒られているような気になる、
し、その前になんでそんなに詳しいのかが不思議だし。

結局。そんなこんなでナビの力は一切使わず、
鬼の力によって宇野港に到着した。

フェリー乗り場につくと車が3台ほど停まっていた。
よかった平日なので人も車も少ない。
少し待って、車のまま船に。島につくまでには約30分ほど。
その間、船のデッキの所でしばし海の旅をする。

祖父はカメラをパシャパシャ撮って楽しそうにしている。
あ、でもパシャパシャってタイプの人柄ではないな。
ばぁしゃんがぁっしゃんといった感じだ。
祖父の事はまた今度詳しく書きたいけれど、
祖父は武術家で現役。
枕元には刀が置いてあるし、道場では黒帯の次の紅白色の帯を締めている。
腕相撲とかまだ負けると思うし、
口癖は「いつどこから敵が攻めてきても」だ。
でも髪型は木村カエラっぽい事に最近気がついて、ちょっと可愛いと思った。

祖母はといえば太陽を眩しそうにするものだからますます鬼に似てしまっていて、もうまるで鬼ヶ島に帰っているみたいだ。

母はといえば息子との久しぶりのお出かけが嬉しいのか、やたら僕のことを撮ろうとする。
音はうーん、パチリパチリかな。

それにしても僕の家族はよくカメラを撮る。
そのおかげで小さい頃からの写真がたくさんあるし、初めて歩いた瞬間のビデオだってある。
二十代半ばの自分としてもこれはすごく有難いことだし、写真にして残すことはますます大切だなと思う。
ああそうか、この人たちは作品を撮っているわけじゃなくて思い出を撮っているのか。
笑いながらカメラを向ける母を見ていると、そんな当たり前のことに気が付いた。

こんな歌がある。
【そうさうまいとかへたじゃないさ。
気持ちを閉じ込めるのさ。それが心のシャッターさ】


僕はカバンの奥からごそごそとカメラを出して、そっと指を添えた。
そして、誰にも気付かれないように、そっとおならをした。

つづく

パッソ。

突然3連休 vol.2

出かけていた祖父と祖母を途中で拾い、
4人を乗せたパッソで宇野港を目指した。
母が助手席で父に電話している。
平日なのでもちろん父は仕事だ。

僕と弟が大学や一人暮らしでお金をたくさん使ったので、
うちにはあまりお金がなくなってしまって、
その所為もあり、このパッソにはナビがついていない。
辛うじて父の車にはついているので、ナビを持っていけと父が電話で言う。

つまり、一旦父の職場に寄って、父の車のナビを、
このパッソにのせていけ取り外し可能だからということだ。
なるほどそいつぁ助かるわぁということで、一旦父の職場を目指す。

そこでふと思い出した。
あ、りゅうくん。
高校の時の友達りゅうくんは父と同じ職場で働いている。
男前でおもしろくてお洒落で笑顔がすごく可愛くて優しくて歯が汚いりゅうくん。
お洒落とか全部帳消しになるほど歯が汚いりゅうくんだ。
高校の時、数百人いる全校生徒の中で一番虫歯が多いと先生に言われていた。
そんなもったいない友達がそこにいる。
(よし突撃してみよう)
僕は人の職場にズカズカと入っていって、りゅうくんを探した。
最初は自分で探そうと思って首を伸ばしてぐるぐるやっていたけれど、
パッソを待たせているしあまり時間も無かったのでもう聞いた。
優しそうな細身のおばさんはやっぱり優しくて、お客さんとして案内してくれ、彼のいる部屋まで連れていってくれた。

ドアを開けるとスーツを着たりゅうくんが風に揺れるカーテンの下で音楽を聴いていた。
少し逆光なのもあって、もわんと思い出の中の光景のような、そんな感じに見える。
ああ、高校もこんな感じでぼーっとさぼったりしていたなあなつかしいなあ、
え?いやいや!りゅうくん何しとん!え、さぼっとん!?
僕はまたてっきりさぼっているのではないかとひやりとしたけれど、音楽の録音作業をしているとの事だった。
よかった、ホツと胸をなでおろし、5分ほど喋ってばいばいした。

ちなみに。もし逆の立場だったら、絶対に来てほしくないし、来られたらすごく困るところをりゅうくんはやはり優しかった。
歯を見るのを忘れてしまったけれど、汚ければ汚ないほど嬉しいし魅力的に感じる。
扉を出る際、僕は彼に気づかれないようにそっとおならをして、ナビ付きになったパッソに戻り、ナビで目的地を設定し、シートベルトを締め、もう一度そっとおならをして、うんとアクセルを踏んだ。

つづく

ラスク。

岡山に帰ってまた今日から東京です。

突然3連休 vol.1

夏に帰れなかったのもあって、ゴールデンウイーク以来の岡山。
少しでも長く帰りたかったので今回も夜光バスで帰ることを選択。
あ、夜光って夜行か。夜行バスで帰った。

駅に着くと母が改札の所に立っていた。
少し背が縮んだかなと思ったけれど、気のせいかなとも思った。
車をとめてある駐車場まで一緒に歩く、
その途中、駅構内のパン屋でジュースでも買いなさいと言ってくれた。
僕はもうまあまあ大人なので、いやええわジュースは、と断った。
じゃあパンを買いなさい。いやパンもええわ。
じゃあドーナツを買いなさい。いや食べてきたから大丈夫。
じゃあラスクを買いなさい。あ、うん、じゃあラスク食べよかな。
母がすごくすすめてきてこれも母の優しさかなと思った、
普通のラスクだけれど、愛のこもったラスクに見えた。
けれど、
よし、これで駐車料金が無料になるわと母がガッツポーズをしたので、
やっぱり普通のラスクに見えた。
しかも次回割引券まで付いてきたと母がまたガッツポーズをしたので、
普通より少しダメなラスクに見えた。

そして車に乗って、家まで発進した。
2人でダメラスクを食べながら田舎道を走る。
あんたがここで事故した時はなあと、僕の事故現場とかも通って、
なつかしい話や、あと最近の家族、特に弟の進路について話した。
ちょっと前まで幼稚園に通っていた弟も今ではすっかり大学院生になった。
てことは小学生だった僕もすっかり社会人になっているということだ。
母はどうかな。母は、うーん、母かな。
僕からしたら昔からあまり変わらないような気がするけれど。
たぶん同じだけ時間はすぎているんだろうな。
とかぼーっと考えていたら、もう家に到着した。

家に帰ると、庭にあった大きな松の木が無くなっていた、
理由はいろいろな説があるみたいだけど、どうやら枯れたらしい。
家は僕が生まれた年に建って、庭は僕が小学校に入学する時に作った。
玄関を出ると松の木がトンネルみたいに生えていて、
それをくぐるように学校に出発して、また帰ってきた。
その松の木が無くなっていて、少しさみしいような、
でも家がよく見えるようになって逆に良かったような、
でももうあの松をくぐることは無いと思うとやっぱり少しさみしいような、
でもまあどっちでもええような、そんな気がした。
結局、まあどっちでもええような気が一番大きかった。

母と今日は何をするかと話をして、
祖母と祖父も連れて、瀬戸内芸術なんとかにいこうと案がでた。
フェリーに乗っていこうと。
僕はイイネ!ボタンを押したかったけど無かったので、
イイネ!と言った。

晴れの岡山、金曜日、お昼の12:00。
これから母、祖父、祖母、僕の四人で、
瀬戸内国際芸術祭2010に行くことに決まった。

つづく