フェリー。

突然3連休 vol.3

車の中で四人でいろいろな話をしながらバイパスに乗って秋の青空。
途中で少しおなかが空いたということで、
BIGという名前の大きなスーパーで巻き寿司などを買って食べた。
またしばらく進むと、あまり知らない道に入る。
いよいよナビの出番だ。と思ってナビをいじっていると、
「貯水湖があるじゃろお!左に!ほんで右に肉屋があるわ!」
祖母が大きな声で言った。
余談で前にも言ったけれど、岡山では桃太郎の話が有名で、
祖母の顔は桃太郎の話にでてくる鬼に似ている。
「貯水湖があるじゃろお!左に!」
「もうちょっとしたら大きい橋があるわ!」
「トンネル!トンネルがあるじゃろお!」
とにかく声が大きいからだんだん怒られているような気になる、
し、その前になんでそんなに詳しいのかが不思議だし。

結局。そんなこんなでナビの力は一切使わず、
鬼の力によって宇野港に到着した。

フェリー乗り場につくと車が3台ほど停まっていた。
よかった平日なので人も車も少ない。
少し待って、車のまま船に。島につくまでには約30分ほど。
その間、船のデッキの所でしばし海の旅をする。

祖父はカメラをパシャパシャ撮って楽しそうにしている。
あ、でもパシャパシャってタイプの人柄ではないな。
ばぁしゃんがぁっしゃんといった感じだ。
祖父の事はまた今度詳しく書きたいけれど、
祖父は武術家で現役。
枕元には刀が置いてあるし、道場では黒帯の次の紅白色の帯を締めている。
腕相撲とかまだ負けると思うし、
口癖は「いつどこから敵が攻めてきても」だ。
でも髪型は木村カエラっぽい事に最近気がついて、ちょっと可愛いと思った。

祖母はといえば太陽を眩しそうにするものだからますます鬼に似てしまっていて、もうまるで鬼ヶ島に帰っているみたいだ。

母はといえば息子との久しぶりのお出かけが嬉しいのか、やたら僕のことを撮ろうとする。
音はうーん、パチリパチリかな。

それにしても僕の家族はよくカメラを撮る。
そのおかげで小さい頃からの写真がたくさんあるし、初めて歩いた瞬間のビデオだってある。
二十代半ばの自分としてもこれはすごく有難いことだし、写真にして残すことはますます大切だなと思う。
ああそうか、この人たちは作品を撮っているわけじゃなくて思い出を撮っているのか。
笑いながらカメラを向ける母を見ていると、そんな当たり前のことに気が付いた。

こんな歌がある。
【そうさうまいとかへたじゃないさ。
気持ちを閉じ込めるのさ。それが心のシャッターさ】


僕はカバンの奥からごそごそとカメラを出して、そっと指を添えた。
そして、誰にも気付かれないように、そっとおならをした。

つづく

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