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「いやよ!わたしはこんなところでていくの!
ぜったいにでていくわこんなところ!
おかあさんみたいにはなりたくないの!
毎日毎日泥だらけになって、わたしはそんな生活いや!」
娘は大きな声で言いました。
父は少し間をおいて、
なんとも言えない悲しい罵声をあびせます。
「ばかもん!すんなこと言って、
おかあのことかなすますんじゃねえ!
おかあがどれだけの思いでこの畑さ守ってくれてると思っとる!
おめえら姉妹を育てる為に、おとうとおかあで一生懸命こさえた畑だ、
それをすんなふうに言うもんじゃねえ!」
小学生の妹も言います。
「そうだよおねえちゃん!そんなこと言うなんてひどいよ!わたしは好きだよ、うちのにんじんおいしいもん。それにれんこんも。日本一だよ!」
それでも姉は続けます。
「いやよ!わたしはでていくの!中学を卒業したら、街に出て、アルバイトをしながらデザイナーを目指すの!そう決めたんだから!わたしの人生だよ!勝手じゃない!」
父は思わず手を振り上げ、娘はぐっと構えます。
その瞬間、だまっていた母が言いました。
「ごめんね…幸子、優子」
「幸子の言うとおり、おかあは毎日泥だらけになって働いてる。化粧はすねえし、よそいきの服も持ってねえ、車の運転もできやすねえし自転車だ。でもなあ幸子、おかあは一度だってこの生活を嫌だなんて思ったことはねえんさ。おまえや優子が生まれて、元気に育っていく姿を見ていて、おかあは毎日毎日嬉しいんだよ。おまえら見てっとな、どんどん元気になって、ああ、おっかあはすあわせだってそう思うんだよ。おかあは服ももってねえし、ピアノも弾けねえ、若くもねえしべっぴんでもねえ、んだどもなあ幸子、おかあは応援するよ。幸子が目指してるデザイナーをおかあは一生懸命に応援するよ。
おかあの夢はおまえや優子がうちのにんじんやれんこんのように強くまっすぐに育って、いつか、たくましい旦那さん見っけて、しあわせになることさ。おかあはどんな時でもおまえらのこと応援してる。」
「幸子、優子、こっちへおいで」
母は泥だらけの服のまま2人を抱きしめました。
幸子はなぜだか涙がとまりませんでした。
父は幸子の頭をぽんと優しく叩き、ごくっとお酒を飲みました。
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みたいな。
みたいなシーンを想像しながら、
僕は大嫌いなにんじんを食べています。
それを想像しながら食べると、
なんとか食べられるからです。
おわり
4 件のコメント:
奥が深すぎます。
ちょwwwwwwwww
オチまで長wwwwwwwwww
モンリーさん
愛ですよね。にんじんも、にんげんも。
すうやまさん
オチではありません。
起承転結の転です。
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