ハンチング。

連休 vol.2

しばらくして目がさめると、
電車はもう故郷の近くまで帰っていた。
読もうと思って持ってきた本は、
結局1ページも読まなかった。

駅に到着すると、僕は運転手にサンクスと伝え改札を出た。
すると父からの電話が鳴り、
「遅れるから待っといて」
しばらく駅で父の車を待つことになった。
大丈夫。
僕は会社で何時間も上司を待ったりする事もあるから、
20分くらい待つ事は屁でもなかった。
でも屁はこいた。
人が誰もいないから余裕だから。
ふと下を見ると、なんだろうかバネが落ちていた。
なぜここにバネが。誰が何の為に何故バネを。
そしてバネそのものを単品で見たのは久しぶりだ。
僕は父の車が来るまでそのバネで遊ぶ事にした。
足を乗せてびよーんとしたり、
ころころと転がし足でけ、あ、父が来た。
父が来たので助手席に乗った。
今日は地元の藤まつりがあり、父はその仕事の途中で抜けて来てくれたそうだ。
僕は家に帰る前に一旦その藤まつりについていく事にした。

藤まつり会場について藤を見ると藤はまだ咲いていなかった。
今年は温度差が激しかったりで例年より時期が遅いとの事である。
ここでふと思う、
僕がうすいムラサキ色が好きなのは、
幼い頃から見てきた藤の色だったのかなと。

ムラサキ色のない藤まつりは、基本的にミドリ色で構成されていた。
でもイベントだけは開催されていて、よく晴れているし、
そんな藤まつりもまあたまにはアリだなと思った。
ステージでは、和太鼓のニッポン堂々とした演奏や、
シンガーのおばさんがミニスカートで美空ひばりを歌ったりしていた。
ちなみにこの和太鼓の団体は父が若い頃に何人かと立ち上げたもので、
(この事はまた今度いつか詳しく書きたいと思うけれど)
幼い頃は父の和太鼓をよく聞きに行っていた。
今となってはただの薄毛の、というかハゲだけれど、
昔は髪も2323だったし、筋肉もなかなかだったので、
僕と僕の弟は父のステージを見るのが好きだった。

父がお弁当を2つ持ってこっちに歩いてきた。
余談だけれど、ここ数年父は頭を隠すためにハンチングをかぶる。
さらに余談だけれど、父は調子が良くなるとハンチングをくるっと半周させ逆さまにかぶる。
でも僕は半周させている父を見かけた時は、すぐに元に戻すよう心がけている。

「そこらへんで座ってくうか」
と、はしっこのベンチに座り、昼を食べた。
僕は18歳から親元を離れているので、
こうして父と2人でお弁当を食べるなんて事は
ものすごく久しぶりな気がするし、
もしかしたら初めてかもしれないと思った。

途中、父が僕の方を見て止まった。
「ん?どしたん?」
と聞くと、
「そっちのシャケの方が大きいなと思って」
と言ってきた。

このハゲ、

つづく

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