ボール。

イギリスに行っているマイフレンドからテルがあった。
テレビ電話で1時間以上話した。
とてもひさしぶりに話した気がする。
歳下だった彼は、当時の僕よりも歳上になっていて、
当然、僕はさらに歳上になっている。

白いナイロンのズボンが似合う少年のようだった彼も、
今ではひげぼーぼーのお兄さんになっていた。
デニムがよく似合いそうだ。

5年程前、彼は僕によく相談をしてくれた。
大阪の難波、夜の道頓堀の側に座り、
服の事、デザインの事、パターンの事、
それから友達の事、恋愛の事、将来の事
いろいろと話した、話したんやで。
僕は無い知恵をしぼって何かいい事を言おうと必死だったと思う。
僕だって何も分からないのにね。

そして5年がたち、イギリスに行った彼は言った。

「本当に大変だったんだよ、それで忘れてはいけない事が3つできた、
でも僕ねこっちきてちょっとだけね、何かこう、見つけた気がするんだよ」

ズシリと重かった。
彼は、しっかりと太っていた。
1人日本を離れ修行して、苦労して、がんばった。

言葉に本当に重い軽いがあるかは分からないけれど、
言葉がボールだとすれば、
そのボールには鍵付きのふたがついていて
中にいろいろなものを入れる事ができる。
でも自分のボールの鍵は自分にしか開けられない。
大きさ形や色は同じでも、中身は人それぞれだったりして。
きっと彼はそのボールの中にたくさん入れて、
そして僕に投げてくれたんだと思う。
中身は見れないけれど多分そう。

僕はキャッチするのがやっとで、
おっとっととよろけてしまいそうだった。

そしてダイエットばかり気にしている自分と
パーマでふわふわした前髪と、
おならばかりでる自分を見て、なんてエアリーなんだと思った。
軽かった。
僕は軽い。
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ふわりふわりと宙を舞い、
風に吹かれていったいどちらが北かしら、
あるいはむしゃりむしゃりと
草を食べ、小さなうんこをたくさんこぼして、
木陰で休んで昼寝ばかり。
しかもここはサバンナでもなければ北極でもない、
日本のサファリーパークかな。
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彼は続けた。
服の事、デザインの事、パターンの事、
それから友達の事、恋愛の事、将来の事。

僕はうんうんと何度もうなずいて、聞いた。
彼のボールを一生懸命キャッチしながら、
ひげぼーぼーの彼のそのひげを見ていた。

そして話は明日は仕事だからそろそろ、となり、
結局僕は彼に何も言えなかったけれど、
最後にひとつだけ彼に聞いた。

ずっと聞きたかった事で、
ずっと聞けなかった事を聞いた。
何よりも1番気になっていた事だ。
僕は自分のボールにたくさん詰めこんで、
しっかりと鍵をかけ、彼に投げた。
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「あの、最後にいっこだけ聞いてええかな、
外国の人とスケベな事とかした?金髪の人とかと。」
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電話が終わり、仕事に備えた。


彼の答えはここには書かないけれど、
僕の最後のボールだけは、
なかなか重かったんじゃないかな。



そして僕は今日、肉を喰べる。
そしてお風呂あがりに筋肉トレーニングをする。

そして。

2 件のコメント:

やんじゅ さんのコメント...

この日記読んだ時
色んな事を想い出したり
たくさんの事振り返ったりして
実はすごく泣けました。
ありがとう。

April. 2010

bosarl さんのコメント...

やんじゅ

え!4月?
イギリスでここ見れてたん?
そりゃ見れるか!笑
きゃーはずかしー!
でも良かった。
どんな気持ちにしても、涙を流すことはいいことだと思うし、ちょっとでもすっきりできたなら良かった。
また泣きたくなったら呼んでください。日本だし、今度は胸を貸しましょう。
ハト胸を目指して筋トレしときます。