山登りに行った。
これは会社の同期との恒例行事だ。
年に2回、山登りと座禅に行って日々の苦労を分かち合う。
本当は梅雨頃に登る予定だったのが、延びて夏になってしまったけれど。
僕は今回の山登りツアーで、したい事がみっつあった。
ひとつは、お昼ご飯を外で食べること。
ふたつは、海かどこかで花火をすること。
みっつは、つどいにいやんに誕生日おめでとうと言うこと。
つどいにいやんというのは、同期の中でも1番年上で、
背も高くて笑顔が優しく、とても眩しそうに笑う、
ミスターチルドレンの桜井を不器用な感じにした人。
同期のリーダー的存在で、僕はその右腕として使ってもらっている。
山登りも、いつもはこのつどいにいやんが企画してくれていたけれど、
今回、にいやんが誕生日で30歳になったという。
これはもう右腕である僕が企画して、
みんなで誕生日おめでとうを言わんといけん。
なんかしらのプレゼントも用意せんといけん。
そんな思いから今回は、
恒例の山登り+アルファの気持ちで東京駅をスタートした。
今回参加したのは10人。
レンタカーで千葉を目指す。
途中、スーパーでお弁当の食材を買おうということになった。
僕はおにぎりとか、からあげとかをイメージしていたのだけれど、
同期はお洒落な人ばかりなので、
「フランスパン」「チーズ」「生ハム」「生春巻き」など、
わけのわからんものばかりカゴに入れる。
あと何故だか誰かが、キムチを入れている。
僕はおにぎりとからあげを鼻で入れた。
無国籍なカゴをレジに運び、お会計をする。
この時点ですごく楽しかった。
レシートがありえない長さになったし。
そしてまた車で移動。
しばらく高速道路を走り、高速を降りてから田舎道を進む。
海が見えた。夏の海だ。
ひょひょひょひゃっほーう!と心の中で叫びながら、
「おー。海ですなあ!」と大人っぽく叫んだ。
これは、まだ少し気を使っている同期がいる為、
まだ全てをさらけ出せずにいる為だ。
さらけ出せずにいる間に現地に着く。
山のふもとの駐車場に車をとめて、
さっき買った地球風お昼ご飯を持って途中のベンチまで登る。
ベンチのある場所は広くなっていて、
隣にでかい大仏が座って瞳を閉じている。
これが本当にとてもでかい、きっと今想像している2倍ほどの大きさだ。
同期が「見て!頭にでっかい蜂の巣がある!」
と、いまどき小学2年生でも言わないようなボケを言ってきたので、
「いやあれヘアスタイルやから!」
「ベーシックダイブツスタイルやから!」と迷惑そうにつっこんだら、
「いやちがうって!その横!横!」と横を見てみると、
本当に大きな蜂の巣がくっ付いていた。
「なんかごめんなあ」と同期に謝り、食事を始めた。
フランスパンやおにぎりやキムチがきれいに並べられ、
それをギラギラと太陽が照らし、遠くに見える海からの風で、
フランスパンは故郷である仏を想い涙し、
隣の大きなフランスは瞳を閉じながら欲を我慢している。
おいしく完食し、
ごちそうさまごみはきちんと片付けましょうさて登りましょかと、
スムーズに上を目指した。
道は基本的に階段になっていて、これがまたしんどい。
30歳になったにいやんの膝は、くすくすと笑っていた。
さあ、あと少しあと少しとみんな汗を流して登る。
よいしょおおお!
と最後の一段を登るとそこには360°の夏が待っていた。
太陽、雲、海、山、風。
夏のオールスターが一斉に僕たちを囲って回った。
僕は、ひょひょひょひゃっほーう!と心の中で叫びながら、
「おー。夏ですなあ!」と大人っぽく叫んだ。
ここで少し休憩をし、お茶などを飲み、少し語る。
空の上を回っていたとんびに、
「おいどうだ、僕の同期は最高だろう?」
と込めてピィーと手笛を吹いたり、
両手をほっぺに添えて
「ヤッホー」と叫ぶトレンディースタイルの同期に
昭和生まれの素晴らしさを改めて感じた。
で、下山。
車に戻って、さあ次はどうしようかと相談。
僕は海に行って花火をしたかったのだけれど、
もうみんな結構疲れていたし、1人が夜用事があると言うので、
少し残念だったけれど、海には行かずに東京へ戻ることに。
がしかし。
途中海辺の道で夕焼け海のむこうに見覚えのあるシルエットが現れる。
マウントフジだ、おいみんな!マウントフジが見えるよ!
千葉の端から、海を挟んで富士山が見えた。
いや美しい、美しすぎるで。
みんな嬉しい偶然に喜び肩を震わせた。
みるみるうちに夕焼けも夜になって、
僕らは高速道路の固い光になってかっこよく帰った。
そして、もうすぐ東京駅付近だ、高速を降りようという頃。
また偶然震えが起こる。
すぐそこで大きな花火があがったのだ。
どこだかの花火大会が開催されていたのである。
高速道路から見る花火は格別だったし、
僕はその時点でふたつめの願いを叶えれた。
あと最後はそう。
にいやんにおめでとうを言うだけだ。
それで今回のツアーは百点だ。
レンタカーを所定の位置へ返し、
では解散しましょうかで輪になった時、そこがチャンス。
僕はドキドキとタイミングを待つ。
みんなが輪になった、にいやんがまとめに入る。
「じゃあ今日は楽しかっ…
「チョ!チョトマッテニイヤン!」」
(しまった!緊張してカタコトみたいになってしまった!)
「アノ、チョトコンカイ、ニイヤンがサンジュサイにナタというコトで…」
(か、かたい!下手くそ!自分下手くそ!)
「ミナでプレゼントヨウイシマシタ」
(くそう!純日本人なのに!くそう!)
すごくぎこちなくなってしまったけれど、
僕はにいやんにプレゼントを渡した。
みんなからだ。
中身は8冊の本と1箱のラムネ菓子。
これはバファリンよりも優しい僕の提案で、
「みんなきっと金欠でアレだから、家にある本の中で、
何かおすすめの本を一冊ずつプレゼントしよう」と呼びかけたものだ。
すると9人中8人がちゃんと持ってきてくれていた。
1人は何故だかラムネ菓子を用意してきたけれど。
それぞれ自分の好きだった本をにいやんにあげた。
男の料理雑誌、絵本、写真集、バカドリル。
好きな本だけあってボロボロになっていたり、シミのようなものもついている。
にいやんはとても眩しそうに笑い、
不器用そうに「ありがとね」と言った。
そしてリュックサックにそれを入れて重そうに担いで帰った。
それを見て僕はまた心の中で何度もツイートした。
「それは愛のおもみだゾ」
「愛なんだゾ」
「愛のおもみ なうゾ」
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こうして今回の山登りツアーは幕を閉じた。
結果、この日僕は百点満点をたたきだした。
いや百点どころかあれだ、
四時間目は自習、給食はカレー、
五六時間目は運動会の練習だった時くらいの満足度。
すごくよかった。
そして同期の有難さを改めて感じた。
職種も出身も歳も違うけれど、こうして同期として、
仲間として集まれる人がいるというのはすごく幸せなことだし、
この先、いつまで今の会社にいるかも分からないけれど、
この人達とは、いつまでも同期でいたいと思った。
大切にしたいと思った。
ありがとう。これからもよろしくゾ。
おわり
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