今日の失敗。

「奇跡だと思った」

さっきまで雨だったのに、
急によく晴れた日のお昼休み。
こんな日は会社の外で食べるに限る。
僕は買っておいたパンを持って会社を出た。
近くに公園があるのを知っているのだ。
ちょうどいいベンチに座って、よし食べようとかじったら、
飲み物を忘れた事に気がついた。
財布は会社に置いてきたし、
ポケットには100円しか入っていない。
これはもう飲み物はあきらめようと思った瞬間、
缶コーヒー90円と書いてある自動販売機が目に飛び込んできた。

奇跡だと思った。
僕はすぐに自動販売機まで行って100円を入れた。
そして缶コーヒーを押した。
…。ん?
そして缶コーヒーを押した。
…。
あれ、出てこない。
よく見てみると10円釣り切れのマークが出ている。

奇跡だと思った。
90円のコーヒーを買おうとして、100円入れて、
お釣り切れだなんて。10円玉1枚。
なんということだろう。
悔しいけれどしょうがない。
これはもう飲み物はあきらめようと
100円をポケットに戻した瞬間、
チャリという音がした。
あれまさかと思いゴソゴソしてみると、
なんと10円玉がもう1枚入っていた。

奇跡だと思った。
念願の10円じゃないか。
これで買える、僕はすぐに110円をいれて、
そして缶コーヒーを押した。
…。ん?
そして缶コーヒーを押した。
…。
あれ、出てこない。
見てみるとまだ10円釣り切れのマークが出ている。

ああそうかこの10円は僕のものだから、
買えないのか、
110円入れても10円は足りないままじゃないか。
それとあと僕の算数も足りていないのか。
やれやれ。
僕はとうとうあきらめてベンチに戻った。
そしてふと空を見た。
もしかしたら虹が出ているような気がしたのだ。
さっきまでの雨といい、条件がいい。
ビルの隙間から見える晴れ空、
右空から左空へ首を傾けた瞬間、

奇跡だと思った。
屋上の大きな看板広告。
なんとその看板が缶コーヒー、
サントリーのBOSSレインボーだったのだ。

今まで見た虹の中で、一番おいしそうな虹だった。

僕は嬉しくなって、
このことを友達の留守番電話に入れた。

おわり

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