僕が見ていた。

いろんな人がいる。
ほんとうにいろんな人がいる。
いろんなことも起こるし、
いろんな気持ちになるよ。
また近所の小さな坂道を登りました。
朝の3時くらいだったから月が意外な場所にあって、
へんな感じがしました。

同じ月を見ている。なんて言葉があるけど、
あれはうそです。
僕はそうじゃないと思う。
でもその話はまた今度にします。

冬を思い出すのは、19歳の時。
宝塚に住んでいて、
大きな坂の途中の家でした。
その時はファミリーランドという遊園地があったから、
夕方にベランダに出ると、
きらきらとなつかしいような色で光って、
遠くのビルや空のグラデーションと相まって、
それはすごく綺麗でした。
今に思い出すと余計に綺麗な色です。
オレンジに少しピンクを混ぜたような青というか。
オレンジのむこうのほうからは
ボルドーの阪急電車が向かってきます。
僕はそれをぼーっと見ていて、
白い息をはあっと吹いたりしています。
最後の楽しみは青から紺色になる時。
都会の夜は黒ではなくて紺色。
するとすぐに寒くなるので、
部屋に入って窓をしめます。

あの頃の僕はどうしてあんなに堂々としていたんだろうなあ。
怖いことなんてひとつもなかった。

おわり

ぐるぐる。

いろんな色の糸がもつれてしまって、
すごいぐるぐるしたかたまりになってしまって、
ほどこうとしてもなかなかほどけなくて、
でもなんとか少しずつ、
一本ずつほどいていくと、
それぞればらばらの糸になった。

それでそれを見て気づいた。
ぐるぐるしたかたまりのほうがかわいい。
ぐるぐるしたかたまりのほうがやわらかい。
やさしい。

だから糸はぐるぐると手のひらで
もっとまるめればよかった。
それがかたち。

おわり

ノッキンオンヘブンズドア。


話があるんだ。

メリット。

仕事で、たまに営業的な話を受けることがあるのですが、
このあいだ、すごくおもしろくない営業マンがいました。

うちでやる「メリット」としましては・・
「メリット」の出るシステムでございまして・・
お互いの「メリット」にもなり・・
といった感じで、メリットというフレーズを何度も言います。
すでに僕としてはすごくセンスが合わないのですが、
さらに加えて親父ギャグを言ってきます。
「メリっとメリハリもでてね・・」
さらにさらに、それを自分でつっこみ、
そしてついにこんな質問をしてきました。
「あれ?もしかして私すべっちゃいました?」

そうです。
これは絶対聞いてはならない事です。
僕はもう我慢の限界だったので、
ずっと言いたかったこの言葉を返しました。
「さすがリンスが入ってるだけあって、
すべりが良いですねー」
一撃必殺が決まったと思い、
相手の様子を伺っていると、
またすぐにメリットって使ったので、
すぐにお引取り願いました。

おわり